工場見学の予約管理システムに課題。
スピーディな改修・開発が難しいうえ、予約受付開始時にはアクセス集中によってサーバーがダウンするなど、問題が頻発していた
貴社で実施されている工場見学の概要を教えてください。
当社では、ビール、ウイスキー、ワイン、天然水のPR工場(一般のお客様を受け入れご案内している工場)を全国に9つ持っております。この工場見学は、ものづくりの現場を実際にご体感いただくことで当社製品のファンになっていただく、また、そこで得たお客様の声を通して、より良い製品をつくっていくことを目的にしています。
工場見学の実施は新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)が流行した2020年から一時的に中断していましたが、2022年の5月から実施を再開しています。来場者数は、コロナ前の2019年には年間66万人の方にご参加いただいたという実績があり、非常に人気のある取り組みとなっています。
SPIRAL® 導入の背景をお聞かせください。
この工場見学の予約はWebサイト上で行っているのですが、元々使用していたスクラッチ型の予約管理システムにいくつか問題を抱えていました。
最も大きな問題は、アクセスが集中すると予約サイトがダウンしてしまうことでした。工場見学の予約は月ごとに先着制で受け付けており、毎月月初めに翌月開催日程の予約受付を一斉に開始します。予約枠を開放すると、人気な工場だと30分も経たずに満席になるのですが、サイトへのアクセスが一気に集中してダウンしてしまうことが度々発生していたのです。以前のシステムにはアクセス集中を制御する仕組みはなかったので、予約しようとした際にページが表示されなかったり、予約途中にサイトが落ちてしまったりと、お客様にとってかなりストレスになっていたと考えられます。
その他にも、ご予約いただいたお客様への緊急時の連絡がスムーズに行えなかったり、複数のシステムによって予約情報を管理していたために情報の二重入力が発生していたりと、オペレーション上の問題もありました。
コロナの影響で工場見学が一時中断となったことをきっかけに、この期間で予約システムに関する課題を解決してしまおうということで、システムの移行を決定しました。
「ローコード開発プラットフォーム」と「待合室」を高く評価し、
SPIRAL® の導入を決定。既存システムの仕様を維持し、アクセス集中にも耐えることができる予約システムをSPIRAL® で構築
SPIRAL® を選定された理由は何だったのでしょうか。
移行するシステムにSPIRAL® を選んだ最も大きな理由は、機能面です。
我々としては、以前のシステムの機能を維持したまま、SaaS型のシステムに移行したいと考えていました。ただ、工場見学はビール工場、ウイスキー蒸留所、ワイナリー、天然水工場といった異なるジャンルでそれぞれ開催しており、そのツアーの内容もさまざまです。また複数の事業の製品を1つの工場で生産している場合もあります。こういった細かい部分の仕様には、スクラッチ開発のシステムだからこそ対応できていたことであり、他社様のSaaS型サービスでは機能が存在しないため対応が難しいとの見解をいただくことがありました。その点SPIRAL® は、開発プラットフォームとしての側面が大きく、我々の仕様に合った機能開発が柔軟にできました。今後のグロースの観点からしても、弊社に適したサービスであると感じましたね。
また、機能をそのまま移植できることに加え、アクセス集中の問題を解消できる「待合室」という機能があったことも、大きな決め手となりました。
導入するツールは他にもいくつか検討していましたが、このような機能面の魅力に加えて、強固なセキュリティや費用面での優位性も高く評価し、最終的にSPIRAL® の導入を決定しました。
「待合室」のどのあたりを評価しましたか。
「待合室」は、予約受付ページへのアクセスが集中し、トラフィック量があらかじめ設定した閾値に達すると、自動でユーザーを待合室ページに誘導するというものです。待合室ページでは、「あなたは〇〇番目です」「受付可能まで〇分」といった形で、待機しているお客様の並び順や待ち時間を表示することができるため、待ち時間の可視化がお客様のストレス軽減につながるのではないかと期待できました。
「待合室」の搭載により、お客様のストレスを軽減!
お問い合わせの発生率も年間で0.01%以下に。
「ローコード開発プラットフォーム」を活かし、お客様に工場見学をより楽しんでいただくための施策が柔軟かつスピーディに対応できるようになった
搭載した「待合室」の効果はいかがでしょうか。
「待合室」の効果として最も大きいのは、当初の期待通り、お客様のストレスを軽減できたことです。
以前はお客様に待ち時間がどのくらいかを示すことができず、何度もページのリロードを行わせてしまっていたため、サイト全体の負荷が上がり、予約画面につながったとしてもそこから先に進めないといった事態が起こっていました。スムーズに予約ができないことで、お客様からお問い合わせやお叱りのご連絡をいただくことも多々ありました。「待合室」によりサイトへの流入量を自動で適切に調整することができるようになり、アクセス集中によるパフォーマンス低下、エラー発生を予防することが可能に。そのおかげか、昨年だと年間のサイト訪問者数約98万人のうち、お問い合わせ件数は約90件、その中でご指摘の連絡は約30件となっており、お問い合わせの発生率を0.01%以下に抑えられているのは大きな効果だと評価しています。
工場見学はお客様にサントリーのファンになっていただくことが目的ですので、ご来場前にお客様のストレスになっていては本末転倒です。「待合室」の搭載により、さらなるお客様の満足度向上が実現できていると思います。
その他、SPIRAL® 導入による効果はありますか。
以前のシステムではスムーズにできなかったお客様への緊急連絡もスピーディに行えるようになりました。
台風などで工場見学を中止する際、以前は社員がオフィスに出社して、架電やメール送信を行う必要がありました。こうした対応はお客様への連絡も遅くなりますし、社員の安全管理の面でも課題でした。現在はお客様の登録電話番号に対して一斉にSMSの配信ができるようになり、緊急時の連絡スピードが上がりましたし、社員が出社する必要もありません。お客様と社員、双方の安全を確保した運用ができるようになったと思います。
また、Web上での予約受付から来場管理まで一気通貫で行えるようになりました。複数のシステムで管理していた以前と比べると、情報の二重入力、システム間のデータ受け渡しなどの作業がなくなり、情報管理のオペレーションが効率化しました。特に来場者実績の登録においては、以前は予約システム上の情報を来場者管理システムに入力する作業が必要だったのですが、現在はその必要がありません。入力作業は1つの工場見学につき月に約6時間かかっていたので、10種類ある工場見学全体で合計すると、月に60時間ほどの業務時間を削減できていることになります。
工場見学予約システム 予約画面イメージ
スパイラルのサポートに対する評価をお聞かせください。
スパイラルの皆様からは、全体的に手厚くサポートいただけているなという印象を持っています。
導入時でいうと、我々がこれまで古いシステムを使用していたこともあり、要望が特殊だったり細かいものばかりだったりするなか、本当に一つひとつ丁寧に、嫌な顔をせずご対応いただいた点がとてもありがたかったです。管理画面などの操作説明会も柔軟に実施いただき、受入テスト時も修正点をスピーディに対応していただきました。
また、導入後のサポートとしては、ユーザーズデスクを頻繁に利用しています。通常の時間内での対応に加え時間外の緊急窓口もあるのは安心ですし、画面共有しながらのサポートも分かりやすいです。特に、我々のシステムのことがユーザーズデスク側にも共有されていて、仕様を把握していただいたうえでスムーズにお話できる点は非常に満足しています。
今後の展望についてお聞かせください。
今回導入したシステムを活用して予約管理の効率を高めつつ、よりお客様の満足度を高められるような仕組みづくりを進めていきたいです。現在考えているのは、有料セミナーでの事前決済の導入、LINE連携を搭載して工場見学のお知らせ配信や予約後のリマインドをLINEから行えるようにすること、また、先着制だけでなく抽選制の予約方式も導入し、参加者の公平性をより高める運用などを検討しています。
今年で当社のウイスキーづくりは創業100周年ということもあり、製品の魅力をさらに伝えていきたいと考えています。そのためにも、スパイラルの皆様には引き続きサポートいただきたいです。
参考)サントリー工場見学オフィシャルサイト「FACTORIP(ファクトリップ)」
https://www.suntory.co.jp/factory/