紙にまとめた商談情報をデータ化する必要があるものの、手入力による作業負担と正確性を問題視。速やかかつ正確にデータ化できる方法を模索していた
出展した展示会の概要や目的を教えてください。
我々が出展した「Japan IT Week【春】」は、毎年約4万人の来場者を誇る日本最大規模のIT展示会です。IT分野を幅広く網羅した12の専門展から構成され、出展ブースでは製品・サービスの販売や課題についての相談、お見積もりなど実質的な商談が行われます。我々はSPIRAL® ver.2をはじめとした自社製品の新規契約獲得、およびローコード開発プラットフォームとしての認知拡大を目的に、ソフトウェア&アプリ開発展に出展しました。3日間にわたる出展で約1,000名の方々にご来訪いただき、たくさんの方々から関心を寄せていただく大変ありがたい機会となりました。
出展にあたって課題となっていたことを教えてください。
企画段階で問題視していたのが、来訪者の方々や商談内容をデータ化するための方法でした。
ブースではヒアリングシートを用いて、来訪者の温度感や検討状況、次回の商談予定日などを担当者がメモしながら商談を行います。このシートは、担当者が直感的かつスピード感をもって記入できるよう、紙ベースのものを想定していました。お客様の情報はこのシートの他、直接頂戴する名刺の情報もありますが、これら情報が紙ベースのままでは、会期後のフォローアップに際して支障が出ます。来訪者に対する御礼メールの送信や、来訪者ごとの属性(温度感や状況など)に応じたフォローアップを社内で情報共有しながら速やかに行うには、紙情報の迅速なデータ化が必須であると考えていました。
しかし、このデータ化の作業も簡単ではありません。事務スタッフが1枚ずつ手入力するためそれなりの作業時間が必要ですし、入力ミスを完全に防ぐことも難しいものです。これまで過去何度か展示会に出展した際にも同様の運用をしたのですが、この紙情報のデータ化にかかる工数や抱えるリスクによって、スムーズなフォローアップが叶わず、せっかくの出展機会を最大限に活かすことができていないと感じることがありました。
こうした過去の経験と当日の運用の想定から、会期後に商談内容をできるだけ速やか、かつ正確にデータ化し、Web上で各種情報を共有・確認できる方法を模索していました。そこで考えついたのが、弊社サービスSPIRAL® ver.2を基盤に、ワークスモバイルジャパン社が提供するAI-OCR(文字認識)サービス「CLOVA OCR」(※)を使った「ヒアリングシート読み取りアプリ」の開発です。
- POINT
-
CLOVA OCR
CLOVA OCRとはワークスモバイルジャパン株式会社がビジネス向けに提供するAI技術を利用した「LINE CLOVA」サービスの一種で、あらゆる文書や画像・PDFの文字情報を読み取り素早くデータ化するAI-OCR(文字認識)サービスです。
紙のシートを撮影・送信するだけで手書きの文字情報が瞬時に
データベース化される「ヒアリングシート読み取りアプリ」を開発
「ヒアリングシート読み取りアプリ」について教えてください。
紙ベースのヒアリングシートをスマートフォンで撮影し、その写真をフォームから送信するだけで手書きの文字情報が瞬時にデータベース化されるアプリです。実は以前、別の用途で「CLOVA OCR」を使ったアプリ開発を行ったことがあり、そのデータ化の素早さと正確さは認識していました。今回の展示会におけるデータ化の課題にも、きっと有効にアプローチできると思い、本アプリの開発を行いました。
仕組みとしては、SPIRAL® ver.2で作成したフォームへアクセスし、端末のカメラを起動してヒアリングシートを撮影します(予め撮影した写真データから選択することも可)。画像を添付して送信すると、API経由で「CLOVA OCR」へ送られます。ここで画像解析処理が実行され、手書きの文字情報がデータ化されます。その後SPIRAL® ver.2へレスポンスされ、データベースのフィールドに合わせて成形したのち、データが登録されるという仕組みです。
アプリ開発において工夫した点やこだわったことはありますか?
多忙な展示会現場で使用されることを想定していたため、できる限りシンプルな操作性を追求しました。不要な項目やページ遷移は省略。スマートフォンで撮影して送信すれば完了という、1件当たり1分もかからず完結できるシンプル設計にこだわりました。また、多数のヒアリングシートを処理していく中で、同一のシートが重複登録されないように、受付番号によるユニーク制限も設定しました。現場で起こりうる問題を予めシミュレーションし、それに備えた必要機能を設定することができたと思います。
データ化にかかる作業工数は10分の1に。
来訪者へのフォローアップも迅速になり、出展効果は最大限に!
「ヒアリングシート読み取りアプリ」を用いた展示会当日の運用はいかがでしたか?
当初、アプリを使った初めての運用に少なからず不安を感じていたのですが、当日は大きな混乱もなく、むしろスムーズで効率的な運用ができました。
現場では商談を行う担当者、ヒアリングシートを回収する担当者、バックヤードでシートの読み取り処理を行う担当者に分かれ、商談が終わると同時にヒアリングシートを回収し、アプリでデータ化するという一連の運用を整備しました。商談終了とほぼ同時にデータ化できたので、現在の来訪者数やその属性情報がリアルタイムで集計され、最終的な目標に対する進捗度までその場で把握できたことは、担当者のモチベーションアップにもつながって非常に良かったですね。現場のオペレーションも滞留することが無かったので、過去の展示会出展時と比べてブースの回転率が上昇していることを実感しました。
本アプリによる具体的な成果を教えてください。
我々が最も問題視していた、紙情報のデータ化における作業工数が大幅に削減できたことは大きな成果です。ヒアリングシートは1日に約120~130枚、3日間で約400枚発生しましたが、このアプリが無ければこれらを手入力でデータ化する必要がありました。1枚約10分かかるとすると、400枚×10分=4,000分。データ化完了までどうしても5営業日程度はかかる想定でした。アプリの導入により1枚1分、計400分ほどになり作業工数は10分の1に。パンチング作業が無くなり撮影するだけで完結するようになったことは、この工数以上の作業負担の軽減を感じますね。迅速なデータ化のおかげで、会期後の来訪者へのフォローアップも翌営業日から開始できるようになりました。実際に、温度感の高いお客様へフォローアップする中で新たな商談が創出されるなど、確かな効果を発揮しています。
また、前述のとおりスムーズな現場運営によりブースの回転率が上昇したことで、想定以上のお客様対応ができ、デモ対応数や商談アポイント獲得数などが過去最大数で目標達成できたことも、このアプリの成果だと思います。上層部への成果報告も正確かつ迅速にできましたし、データベース化された情報は次回以降の出展における参考情報として活用していくつもりです。
本アプリはどんな人にお薦めできるでしょうか。アプリへの思いなどをお聞かせください。
OCRというデジタル技術についてどの程度正確にデータ化されるのか、実は少々懐疑的だったのですが、かなり汚い崩し文字や画数が多い漢字、癖が強く潰れたような文字でもかなり正確に読み取りができたことに驚きました。展示会という領域に限らず、紙文化が根強い業界や業務においては、確実にコスト削減ができる有力な技術だと思います。
またアプリ開発者の視点からすると、こういったアプリの核となるデータベース周りをローコードで開発できるSPIRAL® の存在はやはり大きいですね。本来であれば、データベースサーバーを用意して、SQLを記述し、フォームのプログラムを作成して…といった工程が必要ですが、SPIRAL® があればこれらはすべてローコード環境内で、簡単な操作で完結します。ヒアリングシート読み取りアプリの開発も時間に余裕があったわけではなく、限られた時間の中で開発完了できたのはSPIRAL® だからこそだと思います。今回のように他サービスとの連携が必要なシーンでも、APIを通じてスムーズに開発できるので、アプリ開発を内製してみたいと考えていらっしゃる方々にはピッタリなプラットフォームだと、自信をもってお伝えしたいです。