助成公募申請にかかる対応がメールや手作業中心。申請数増加に伴い、将来を見据えて電子化対応を検討することに
SPIRAL®導入以前は、どんな課題を抱えていましたか?
これまでは各種公募に対する申請を含め、申請受理連絡や審査後の採否通知など、申請者とのやり取りはすべてメールでおこなっていました。また、申請書から必要事項を一覧表に転記してリスト化し、申請書を所定のディレクトリに整理する作業もすべて手作業でした。最大の課題は、申請メールの見落としをしていないかの確認でした。受け付けたはずが受け付けられていなかった、選考の土俵に上げられていなかったといった状況に陥るのが一番怖くて…。選考して不採択なのと、そもそも審査されていないのとでは全然違いますから。そのため、見落としていないか何度も何度もチェックしていました。心理的負担は大きかったですね。
私たちは、支援の手が行き届いていないニッチなところに手を差し伸べることを理念とした小規模な法人です。そのため、元々申請数はさほど多くなく、1つの公募に対して30〜40件、多くて100件程度と手動で対応できる量ではあったんです。しかし、4種類ある助成公募のうち、1つの公募で申請数が倍増していたことや、公益財団法人化に伴い今後事業拡大をしていくことをふまえると、今の運用では将来対応できなくなる可能性がありました。申請の母数が増えると必然的にミスを起こす確率も上がる。そうならないための合理的な選択として、電子化することにしました。
SPIRAL®で電子申請システムを構築。4種類の助成公募のうち、1つはスパイラル社へ設定を任せ、それを基に他3種類の設定を内製した
SPIRAL®での構築を選んだ理由を教えてください。
私たちは公益財団法人なので、こういった開発には相見積もりを取る必要があります。そのため、SPIRAL®含めいくつかのプラットフォームを検討しました。スクラッチ開発のいわゆる買い取り型のものや、小規模団体向けのパッケージシステムなどと比較し、結果SPIRAL®を選んだ理由は、自分たちでできることの自由度の高さでした。また、システムが古くなった際の改修も念頭に置いた、10年単位のコストパフォーマンスが優れていたことも大きなポイントです。その他、動作の安定性や大手金融機関での開発導入実績、高いセキュリティに対する安心感なども決め手となっています。
どのようなシステムを構築されましたか?
申請者登録フォームから登録後、ログインして公募中の一覧より必要情報を登録・アップロードすることで申請ができる電子申請システムです。4種類の助成公募のうち、まずは「研究費助成公募」についてスパイラル社に設定いただき、その後、他3種類の設定を内製した形です。
1人の申請者が複数の公募に申請する場合もあるため、まず申請者登録をしてから公募先を選べるようにしています。公募申請フォームにて、審査に必要な所属や課題名、e-Rad(府省共通研究開発管理システム)の研究者番号などを登録すると、私たちの方で申請者一覧としてリストを出力できるようになっています。このリストを選考会で利用するような流れです。なお、我々の助成公募では、すでに十分な外部資金を得ている場合は対象外とさせていただいているので、入力いただいた獲得済みの外部資金額が一定の範囲を超えた場合、自動的に「要件を満たしていないため不受理」となるように設定しました。以前は目視で確認して不受理連絡を入れていたため、申請時に判別できるようになって助かっています。また、採否についてはフラグを立てると、それぞれに合わせた文面で通知が送られるようになっています。その際、希望者に対しては選考委員会からの講評が通知文面に自動挿入されるようにも設計しました。(講評のフィードバックは研究費助成公募のみで実施)
一部の設定を内製されようと思った理由や、内製してみての感想を聞かせてください。
元々、導入時から内製ありきで考えていました。なぜなら、些細な修正も自分たちでできないプラットフォームだと、都度外部に依頼しなければならず、やり取りが煩雑になりかねないと思ったからです。
研究費助成公募のシステム開発をする際に、今後の内製を見据えて必要となりそうなテンプレートをすべて詰め込んでいただきました。それを基に、他3つの公募のシステムを作るとしたらどうすればいいかを考え、設計しました。当法人にはプログラムがわかるメンバーがいたので、その人を中心に内製を進めたのですが、最初の開発段階で技術的なところはスパイラル社へかなり細かく質問させていただきました。「自分たちでもできそうだ」と思えるまでディスカッションしていただけたので、大変ありがたかったです。実際作り出してみたところ、多少SPIRAL®独自の癖はありましたが、それを理解してからはスムーズでしたね。わからないことはサポートにメールや電話で連絡すれば教えてくれました。慣れてくれば開発のスピードも上がり、約半年間で3つのシステムを無事に作り終えることができました。
トラブルなく電子申請に移行し、手作業から脱却。公募申請以外にもSPIRAL®を活用し、システム内製の動きも加速!
SPIRAL®の電子申請システムによる効果を教えてください。
まず、一番高く評価しているのが、トラブルなく電子申請に切り替えられたことです。新しいシステムの運用に加え、応募要項の変更やマニュアルの準備などが必要でしたが、2024年度に4つの事業すべてで電子申請による公募を実施し、一連の対応を問題なく終えることができました。また、それまで手作業でおこなっていた申請受付業務のほとんどを自動化することができ、業務量は大幅に削減されました。申請者とのメールのやり取りも軽減しました。体感的には、ベテランの優秀な事務局員を一人雇ったのと同じくらいの感覚です。ヒューマンエラーが起こらない安心感もあります。
電子申請システムの他にも内製されているものがあると伺っています。
はい、我々はウェビナーを年に1~2回おこなっているのですが、その申込フォームをSPIRAL®で内製しました。電子申請システムの申請者登録フォームをテンプレートにして作成した形です。これも従来はメールで申込を受け付けていましたが、フォームからの申込にしたことで、受講者からの質問を講師とリアルタイムで共有することができて、非常に便利です。今後開催予定のシンポジウムや市民講座の申込などにも活用しようと考えています。
今後の展望を教えてください。
今後は採択者側から、報告書を出したり論文出版があった際にPDFをアップロードできたりする機能を作りたいと考えています。というのも、公益財団法人の場合、助成成果の報告書提出が重要だからです。SPIRAL®での内製の経験値も上がってきているので、どんどん活用していろいろな仕組みを作っていきたいと思っています。