ニュースの定時配信を行いたかったが、システム構築にかかる人的リソースや配信設定の負担を考慮すると開発が難しかった。また、配信作業は複数の担当者が携わるため個人情報に触れずに、業務負担なく簡便に使えることが条件だった。
どのような経緯で今回のシステム開発を行うことになったのでしょうか?
京都新聞社では、これまで無料広告モデルによりWebページでニュースなどのコンテンツを提供していましたが、有料会員モデルにリニューアルした「京都新聞デジタルサービス」を提供することになったことがきっかけです。ニュース配信の要望は前々からあったためやりたいと考えていましたが、その開発リソースを割くことができず実現できていませんでした。そこで、今回のリニューアルに合わせてメール配信システムを開発することになりました。業務フロー上複数人でメール配信を担当するため、システムに詳しくない人でも負担にならず、個人情報に直接触れることなく設定できるシステムが必要でした。
開発にあたり、SPIRAL® を選定した理由について教えてください
選定にあたりいくつかのサービスと比較検討しました。メール配信ASPサービスは、専門ツールならではの信頼と実績があり非常に魅力を感じていました。しかし、メールに特化している分、機能が限られており、汎用データベースのような使い方はできません。また同時期に営業部門でMAツールを導入する予定だったため、そこからメール配信することも検討しました。
しかし、MA特性上ターゲットによってメールを送り分ける場合には最適ですが、ニュースレターのような一斉配信には不向きです。料金も配信通数による課金型なのでコストがかかります。それらに対して、SPIRAL® の料金体系は配信数によらないので、コスト的なメリットを感じました。また、他にも「京都新聞トマト倶楽部」をはじめとする企画がありましたが、SPIRAL® なら機能を拡張でき汎用性が高いので活用できそうだなと考えました。システムの構築自体は当社のメディア系技術開発部門で行うことになっていたため、システムを使いこなせるかといった不安がありましたが、パイプドビッツ社は京都に事業拠点があるため、何かあればすぐに直接相談できる体制なので頼れる安心感も選んだ理由です。
配信担当者が掲載コンテンツの選択だけでメールの定時配信や速報を行えるメール配信システムを構築。自動でニュースの閲覧数上位5件を抽出する機能も連携させた。
SPIRAL® で、どのようなシステムを構築したのか教えてください
「京都新聞デジタルサービス」では、ニュースレターを定時でメール配信しています。配信担当者の作業は、ネット公開している記事からおすすめしたい記事を操作画面上でチェックするだけです。すると、配信担当者が選んだおすすめの記事に加えて、システムが自動で閲覧ランキング上位のニュースの情報を抽出し、ニュースレター本文が作成されメール配信される仕組みになっています。配信担当者が個人情報に触れることもありません。このシステムは、毎日正午の定時配信のほか、編集部の判断で緊急ニュースなどの配信にも活用されています。
ほかにも、京都新聞の購読者と地元のお店・施設とをつなぐ「京都新聞トマト倶楽部」のクーポン提供協力店舗のデータベースも構築しました。登録店舗は、小規模店舗から大規模チェーンまでさまざまで、2021年1月現在で約1,400件あります。こちらのデータベースには店舗情報をまとめて登録していますが、社内業務用の管理情報も存在するため、Web上には公開可能な情報だけを表示できるようにしています。
SPIRAL® による開発にあたってご苦労されたことについて教えてください
当初は、SPIRAL® の機能が充実しているため、どこから手を付ければいいのか戸惑う場面もありました。しかし、直感的に操作できるように設計されていて、使っていくうちに要領がわかってきました。また、サポートサイト機能が充実していたということも大きなポイントだったと思います。構築時に困ったことや課題が出てきてしまった、まさにその画面上のサポートボタンを押せば、課題の解決方法が書かれたページが開くため、試行錯誤しながらキーワードを入れて情報を検索する手間がかかりませんでした。まさに、かゆいところに手が届く仕様だと思います。
ニュースの定時配信は会員登録者の9割が購読。また、ローコード開発プラットフォームの活用によって技術者間の情報共有が簡単に行えるようになった。
SPIRAL® を活用したことによって、どのような手応えを感じていますか?
SPIRAL® を利用することで、開発は想像以上にスピーディでした。「京都新聞デジタルサービス」のメール配信システムは、8月末から構築をスタートしましたが、テストも十分に行った上で、11月上旬にはローンチしています。おかげさまで、会員の9割が配信を希望してくださっており、毎日の定時配信だけでも約12,000通(2021年1月現在)配信しています。これまでも大きなトラブルは特になく、質の高いサービスを提供できていると感じます。
メディア系技術開発部門としては、「京都新聞デジタルサービス」での経験を生かし、多機能なSPIRAL® を「京都新聞トマト倶楽部」の顧客情報管理などの他サービスにも活用できたことは、大きな成果だったと思います。協力会社に任せっきりだったデータベース設計も、直感的な操作で扱えるSPIRAL® なら、管理者レベルの知識でも設計が可能となり、非常に扱いやすさを感じています。SPIRAL® という共通のプラットフォームを手に入れたこともメリットです。スクラッチ開発だと、どうしても開発者本人にしかわからないことが起こります。SPIRAL® で、画面共有しながら開発を進められるようになったので、技術者間の情報共有が簡便になり、若手への技術継承にも役立っています。
今後、取り組みたいことについて教えてください
次のプロジェクトとして話が持ち上がっている「電子チラシ」では、クライアントの情報、入稿データ、料金請求などのデータベースが必要になるので、こちらもSPIRAL® による構築を予定しており、2021年度の前半にはローンチさせたいと考えています。SPIRAL® は完成度や汎用性が高いので、既存のシステムの機能改善などにも積極的に活用していきたいですね。まだまだ知らない機能もたくさんあるので、パイプドビッツ社には事例紹介などを通じて、新たな活用法を教えていただきければと思います。実際、別の部門の業務効率にも役立ちそうな事例もあったので、折を見て検討を進めたいと考えています。このほか、システム開発における世の中のトレンドや、セキュリティレベルなど、こちらではサーチできない部分があります。高い技術を持っているパイプドビッツ社が水準としていることは勉強になるので、今後も引き続き情報提供いただければ嬉しく思います。