(2018年11月07日掲載)
※企業情報・肩書などを含め、本事例ページに記載された内容は取材当時のものです。
導入事例
CUSTOMERS
コクヨが「本当の」働き⽅改⾰を推進するWebアプリを
わずか5カ⽉で構築できた理由
インタビュー
INTERVIEW今年で創⽴113年を迎えるコクヨは、和式帳簿の表紙製造から始まり、現在は⽂具や事務⽤品だけでなく、オフィス家具の製造・販売や空間構築、オフィス通販、⼩売業まで⾏っている。コクヨは今で⾔う「働き⽅改⾰」につながる、「働きやすい空間づくり」や「オフィス空間の運⽤⽅法」などを⾃社商品・サービスを通じて1960年代から提案してきた。その知⾒を活かし、企業の働き⽅改⾰を成功に導くための新たなWebアプリを、わずか5カ⽉間で構築した。どのようにして迅速にWebアプリを構築していったのか、そのアプローチについて紹介しよう。
1969年から働く姿を公開している
コクヨ
⽂具・事務⽤品やオフィス家具の提供で知られるコクヨだが、新しい働き⽅/学び⽅についても⾮常に感度が⾼い企業だ。およそ50年も昔の1969年から、「⽣きたショールーム」として実際にコクヨ社員が働いているオフィスを⾒学できる「ライブオフィス」を全国で展開しており、単にモノを展⽰・販売するだけではなく、快適なオフィス空間の構築⽅法や使い⽅を提供したいという強い思いが伝わる。
たとえば約800坪の霞が関ライブオフィスでは、限られたスペースを可能な限り有効活⽤できるように、グループごとのフリーアドレス制を採⽤した空間を構築している。テーブルやカウンターなど、デザインや形状の異なる家具を配し、休憩にも仕事にも対応できる空間として、スペースを多⽬的に活⽤。またペーパーレス化なども含め、⽂具の新しい運⽤⽅法なども⾃ら実践している。
「まだ働き⽅改⾰という⾔葉が世間に浸透する前から、われわれ⾃ら働き⽅に関する知⾒の収集を⾏い実践してきました。その姿を⾒ていただき、お客様の課題解決につながればと考えています」と語るのは、コクヨ B流通統括本部の伊藤 裕規⽒だ。
何が課題か、どこから⼿をつけてよいか分からない
しかし、働き⽅改⾰の実験と実践を繰り返しながら、さまざまな企業の声を収集し、企業が真に求めている働き⽅を探るうちに、今の働き⽅改⾰について「まだまだ多くの企業において、本質的な改⾰が思うように進んでいない実態がありそうです」と伊藤 裕規⽒は警鐘を鳴らす。
「働き⽅改⾰は盛り上がっていますが、意外なほど『成功している企業』は少ないのが実態です。弊社が独⾃で⾏ったアンケート調査でも、『労働時間を削減するための制度整備等を⾏い経営層としては成功だと考えていても、現場は隠れてサービス残業する機会が増えただけだ』とシワ寄せを嘆いているような、経営層と現場のギャップの声が数多く聞かれました」(伊藤 裕規⽒)
働き⽅改⾰と⼀⼝に⾔っても、切り⼝やソリューションはたくさんある。業種や業態、規模や社⾵、企業のステージなどによって適切なソリューションも変わるはずだ。そうした⾃社での経験と、多くの企業を調査し、働き⽅改⾰の実態を伺っていく中で浮き彫りになったのが、「そもそも何が課題なのか分からない」という問題だ。
「お客様からも、本質的な働き⽅改⾰を⾏ううえで『何を課題にすればよいか、どこから⼿をつけてよいか分からない』という声が多く聞かれました。そこで、働き⽅に関する顧客の課題を⾒える化し、優先順位を整理して⾒せることができれば、働き⽅改⾰を強⼒に⽀援することができるのではと考えたのです」(伊藤 裕規⽒)
そこでコクヨでは、“現場不在”の働き⽅改⾰をなくし、働き⽅のコツや⼯夫を広く提案するために、「働き⽅改⾰提案委員会」(ACTION TO CHANGE WORKSTYLE以下、ACW)というWebサイトおよびWebアプリ構築に着⼿することを決めた。
しかし、ここで課題となったのが「開発期間」だった。
販売店と共に働き⽅改⾰を進め、販売店が顧客に⽀持される
「はたナビ」を提供
ACWは、コクヨのパートナーである販売店と共に顧客のニーズ・困り事を解決することで、働く⼈⼀⼈ひとり「その⼈らしく働く」ことを応援し、組織のクリエイティビティの質を⾼め、顧客企業の競争⼒向上に貢献することを⽬的とした取り組みだ。コクヨは、それを⽀える仕組みとして会員制Webサイトを構築し会員がサイト上から顧客企業の働く環境を診断し、課題の⾒える化ができる機能を実現した。全国の販売店に展開し、エンドユーザーの企業に案内している。
具体的には、「はたナビ」という2つのWebアプリが実装されている。1つは「はたナビクイック」というアンケート収集・分析アプリだ。16問の簡易的な選択式アンケートが⽤意されており、スマートフォンやWebブラウザから回答すると、「効率性」「快適性」「創造性」の三要素からオフィスの働きやすさが総合的に評価され、それを実現する場やソリューションの充⾜度が明らかになる。
もう1つの「はたナビプロ」は、さらに詳細な59問のアンケートをWebサイトから実施し、働く環境の課題の⾒える化と、優先順位を付けるものだ。こちらは、課題の⾒える化と、満⾜度が⾼まる提案まで⾏える本格的なものだ。診断結果に関しては、はたナビクイックと同様に三要素から、テーマ別の重要度と満⾜度で評価される。
このように「はたナビ」は、企業が働き⽅を改善していく際に、具体的にどこから⼿をつけるべきかという課題に対する⽰唆や、きっかけづくりを提供する便利なWebアプリになっている。エンドユーザー企業からの評判もよく、販売店からも「顧客とのコミュニケーションがとりやすくなった」など、有効な営業ツールとして好評を得ているという。
わずか5カ⽉⾜らずという異例の早さでWebアプリを開発できた理由
そもそも、ACWの企画が⽴ち上がったのは昨年3⽉。そして8⽉にはスタートさせる予定で動いていた。ローンチまでわずか5カ⽉⾜らずという異例の早さだ。
情報システム部で開発を担当する伊藤 匡史⽒は「そのため、スピード感のあるサービスで開発を⾏う必要があり、要件定義から始めて⼀から開発する⼿法をとる時間はありませんでした」と当時を振り返る。
そこでコクヨが選択したのは、パイプドビッツのクラウド型プラットフォーム「SPIRAL®」だった。Webアプリ構築プラットフォームはいくつかあるが、なぜSPIRAL® を選んだのか。選定の決め⼿について、伊藤 匡史⽒は次のように明かした。
「ACW会員サイトは『はたナビクイック』『はたナビプロ』以外にも多くの機能を構築する必要がありました。これらの機能を⾼いセキュリティでかつ、短い開発期間での構築に、『⼤丈夫です』というお墨付きをいただけたのは、唯⼀パイプドビッツのSPIRAL® だけでした」(伊藤 匡史⽒)
SPIRAL® では、あらかじめ⽤意された600以上のコンポーネントをブラウザ操作で組み合わせるだけで、データベース(DB)に連携したWebUI、認証、メール配信などを組み込んださまざまなWebアプリを作成できる。⼟台となるDB構築も簡単で、SQLをわざわざ書かずとも、グラフィカルなUIで直感的にDBを構築することが可能だ。メールマガジン、お問い合わせ管理、顧客情報管理、Web給与明細など、よくあるアプリのテンプレートも多数⽤意されている。
ノンプログラミングでWebアプリを作れることが特徴ではあるが、PHPで柔軟にカスタマイズすることもできる。実際、「はたナビ」はSPIRAL® のプラットフォームをうまく活かしながら、PHPでかなりの部分をカスタマイズして作成しているという。さらにAPIを利⽤すれば、さまざまな外部システムとの連携も可能だ。
「サービスの選定にあたっては外部システムとの連携が容易にできることも必須条件でした。ACW会員には1⼈1枚会員証を配布していて、弊社のライブオフィスやセミナーの会場にあるリーダーに会員証をかざすと、その情報がSPIRAL® のデータベースに書き込まれ、後から⾃⾝の活動情報を振り返ることができます。また、活動履歴に応じてポイント付与される仕組みとなっており、⾼ポイントを獲得された会員は年に1回販売店様が集まる⼤会で表彰をさせていただきます」(伊藤 匡史⽒)
またACWのような会員制のWebサイトを構築したとき、課題となるのが、セキュリティをいかに担保するかという点だ。
「ACWの場合には、会員の⼤切な個⼈データを扱うことになるので、特にセキュリティについては重視していました。これについても、SPIRAL® は⾦融機関や官公庁など、幅広い業種や業態に実績があり、信頼性も⾼いと判断しました。さらにパイプドビッツ様から、リスクも含めた形で、さまざまな視点からのアドバイスをいただけたことにも安⼼感を持てました」(伊藤 匡史⽒)
新⼈でも改善提案が可能に、
これからも情報基盤として
ブラッシュアップ
もうすぐ運⽤から1年を迎えるが、「はたナビクイック」は現時点で約7000社の企業に利⽤され、パートナーである販売店からも使いやすいと評判だ。実際、「新⼈でも『はたナビ』で密度の⾼いヒアリングと改善提案ができるようになったので、若⼿による受注が増えている」との声もあるという。
今はこのWebアプリを活⽤し、エンドユーザーの課題解決の⽀援と、販売店の提案⼒・営業⼒強化に注⼒している段階と語る⼀⽅で、今後の課題について伊藤 裕規⽒は次のように語る。
「これがゴールではありません。今後どのようにWebサイト、Webアプリを発展させていくか、試⾏錯誤している段階です。たとえば、官公庁など業界別のWebサイトを構築し、働き⽅に関するお役⽴ち情報を共有するといったことも可能でしょう。ブラッシュアップを続けていき、販売店様とお客様とわれわれをつなぐ情報基盤にしたいと考えています」(伊藤 裕規⽒)
コクヨはこれからも、エンドユーザーに寄り添った「実効性のある」働き⽅改⾰を提案していくという。今後の新しいWebサイトやWebアプリの構築でも、パイプドビッツのSPIRAL® が威⼒を発揮することだろう。