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不動産業界にDXが求められる理由とは?需要性やメリットなどを総まとめ

掲載日:2022年5月12日更新日:2024年2月21日

今、あらゆる業界に求められている「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」。不動産業界も例外ではなく、初動の早い企業ではすでにDX推進をスタートし、成果を出している企業もあります。本記事では、不動産業界が押さえておきたいDXの知識をまとめました。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とはそもそも何なのか?

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とはそもそも何なのか?

不動産業界においても注目度高まるDX。しかし、「そもそもDXとは何か?」と疑問を抱えている方も多いでしょう。DX推進の第一歩は、DXとは何かを明確にすることです。まずはDXの定義を確認していきましょう。

経済産業省が定義するDX

DXに対する解釈は国や地域、企業や人によって違います。国際標準などもないのが現状であり、自社にとってのDXとは何かを定義することが大切です。その参考として、経済産業省の定義をご紹介します。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:経済産業省 デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン

経済産業省の定義からは「DXは企業に極めて大きな変革をもたらす取り組み」と考えることができます。後述しますが、確かにDXにはビジネスモデルそのものを変えてしまうような力があり、だからこそ多方面で注目されているのです。

IT化・IT活用とは何が違うのか

DXが叫ばれるようになる以前は「IT化」や「IT活用」を掛け声にした企業がたくさん存在しました。では、従来のIT化・IT活用とはどう違うのでしょうか?

IT化・IT活用と呼ばれる取り組みは一般的に、アナログ業務をデジタルに移行し、作業効率をアップさせることを主な目的としています。いわゆる生産性向上を、ITの力で達成するのがIT化・IT活用です。

DX推進により生産性向上が達成されることはありますが、それは副産物のようなものです。DXとはあくまでもデータやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルや製品・サービス、企業風土などに変革をもたらす大掛かりな取り組みを意味します。

DXの具体例(ロールス・ロイス社)

ロールス・ロイスと聞いて自動車ブランドを思い出す方も多いでしょう。一方で、世界大手の航空機エンジンメーカーである英国ロールス・ロイス社も有名ですね。DXについて説明するにあたり、ロールス・ロイス社に良い事例があります。

それが「Power By The Hour」と呼ばれるサービスです。ロールス・ロイス社は航空機エンジンに多数のセンサーを取り付け、そこから得られるさまざまなデータを解析し、エンジンの出力と使用時間に応じて利用料金を支給するサービスを開発しました。

これはまさに、データとデジタル技術を活用して航空機エンジンの「販売」から「サービス」へと切り替えた、ビジネスモデルの変革と言えます。このような大規模な変革をDXと呼ぶのです。

不動産業界におけるDXとはどのようなものか?

不動産業界におけるDXとはどのようなものか?

では、不動産業界におけるDXとは何かについてお話します。不動産業界において活用される技術のことを「不動産テック」と呼びます。不動産テックを用いることで、不動産業界では以下のようなDX推進を可能にしています。

重要事項説明の電子化

不動産業界では2021年3月30日より、重要事項説明と呼ばれる手続きの電子化を認められました。重要事項説明とは不動産取引において、宅地建物取引業者が取引当事者に対し、契約上重要な事項を説明する業務です。

国土交通省は当該業務をオンラインで行うことを認めているのです。ちなみに、通称「IT重説」と呼ばれています。

IT重説た認められたことで不動産業界は生産性向上を達成し、そこで生まれた余剰リソースをお客様サポートに回すなど、サービスや業務プロセスの変革などに充てることができます。

不動産履歴情報の一元化

国土交通省が現在進めているのが、「全国の土地・建物の情報を共通IDで一元的に管理する仕組みづくり」です。これに伴い不動産業界では顧客情報、業務マニュアル、営業ノウハウなどあらゆる情報の一元管理が求められるようになっています。

情報一元化により新しいビジネスモデル誕生につながる可能性が高く、国土交通省の取り組みに合わせて情報一元化を目指すべきタイミングに立たされています。

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帳票作成の自動化

不動産業界では契約関係書類や案内書類など、多くの帳票を作成します。種類も多い上にミスが許されないため、精神的ストレスの強い業務です。この帳票作成を自動化するだけでも、DX推進の大きな足がかりになります。

帳票作成業務には多大な時間を要するため、月間数百〜数千時間の作業時間短縮につながる可能性が高いのです。

デジタルレイバーの活用

デジタルレイバーとは「仮想労働者」を意味します。具体的にはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのソフトウェアを用いて、不動産業界にある定期業務を自動化するものです。

デジタルレイバー活用は多方面で進んでおり、大きな成果を上げている企業もあります。複雑な作業でも定型的なものであれば自動化でき、高い生産性向上につながるでしょう。

不動産業界でDXが求められる理由とは

不動産業界でDXが求められる理由とは

不動産業界でDXが求められるようになったのは、ここ数年の話です。なぜDXが求めれるようになったのか?その理由を知り、自社のDX推進を具体的にイメージしていきましょう。

長時間労働が常態化し、人手不足が顕著に

長時間労働は、不動産業界が長らく抱えている問題の1つです。パーソル総合研究所と東京大学 中原淳准教授による、6,000人を対象に大規模な定量調査では各業種の残業実態が明らかになっています。

出典:パーソナル研究所 業種・職種別残業実態マップ──どの業種が、どのくらい働いているのか

不動産業界におけるメンバー層の残業時間は、全体で4番目に高い結果となっています。また、エン・ジャパンの調査によると残業時間の増加傾向に対して、「増加傾向」「変わらない」を合わせた割合が全体平均を上回っていることがわかります。

出典:エン・ジャパン株式会社 ミドル2000人に聞く「残業時間」実態調査―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―

このようなデータから不動産業界では長時間労働が常態化している現状が読み取れます。残業時間が多いと就労意欲が低下し、それによって慢性的な人手不足につながっています。

多様化する顧客ニーズへ対応しなければならない

インターネットの登場、スマートフォンの普及により多くの業界で「顧客ニーズの多様化」が進みました。顧客は自ら情報収集を行うようになり、より自分のライフスタイルにマッチした商品やサービスを探すようになります。

不動産業界では店舗へ足を運ぶ機会が減り、オンラインで物件探しや内見を行ったりもします。さらに新築不動産だけでなく中古不動産やリノベーション物件の需要も高まり、顧客ニーズは極めて複雑化しているのです。

そうした顧客ニーズにきめ細かく対応するには、データやデジタル技術を用いてDXが欠かせないと考えられています。

古い商習慣により効率化が阻まれている

不動産業界は長らく変化の少なかった業界です。重要事項説明の電子化ですら、2021年3月30日にようやく施行されました。顧客管理をITで行っていても古いシステムのままだったり、帳票作成を手書きに頼っていたりと古い商習慣が業務効率化を阻んでしまっています。

こうした状況を打破するには単純なIT化・IT活用だけでなく、 DXを推進して古い商習慣や企業風土そのものを改革しなければいけません。

不動産業界がDXに取り組むメリット

不動産業界がDXに取り組むメリット

不動産業界が DXに取り組むことでどのようなメリットがあるのでしょうか? DXのメリットについて把握することで、 DX推進の原動力になります。それでは不動産業界が DXに取り組む4つのメリットを確認していきましょう。

顧客満足を生み出す仕事に集中できる

どれだけ高い顧客満足を勝ち取れるかどうかは、ビジネスの重要課題です。そのためには、顧客サービスに対して時間と労力をかけなければいけません。

そこで必要なのはデータとデジタル技術を活用した業務効率のアップです。帳票作成など定型的な業務を自動化できれば、従業員は顧客サービスにより多くの時間を割くことができます。結果として顧客満足が生まれ、より多くのお客様に自社サービスが選ばれるようになるのです。

人手不足解消による労働環境の改善

デジタルレイバーの活用により、人手不足解消を実現できる可能性があります。RPAなどの先進デジタル技術を活用した DX推進はすでに始まっており、年間数万時間の作業時間短縮に成功している企業もあります。

人手不足が解消されれば労働環境も改善され、従業員にとって働きやすい環境を整えられます。

従業員のライフワークバランスを改善

DX推進によって残業時間が短縮されれば、従業員のワークライフバランスが改善されます。仕事のプライベートの両立により心身ともに充実した日々を過ごせるようになり、ひいては仕事のモチベーションアップにつながるでしょう。

ビジネスに新しい付加価値を生み出せる

DX推進で最も期待したいのが、ビジネスに新しい付加価値を生み出すことです。前述したロールス・ロイス社の事例のように、データとデジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを確立できれば、不動産業界の中で確固たる地位を築けるかもしれません。

多くの業界が DX推進によって大きな変革を遂げており、不動産業界も今後の変革に期待が集まっています。

DXに取り組むデメリットやリスクはあるのか?

DXに取り組むデメリットやリスクはあるのか?

メリットなどプラスの情報ばかりが先行している DXですが、デメリットやリスクも当然あります。不動産業界も例外ではなく、次の3つのデメリットやリスクが考えられるので、メリットと合わせた把握しておきましょう。

DXが上手くいかずコストが無駄になる可能性

当然のことながら、 DX推進が上手くいくこともあれば失敗する可能性もあります。ボストンコンサルティンググループの調査によると、調査対象となった日本企業のうち、 DXに成功した割合はわずか14%でした。
出典:ボストンコンサルティンググループ デジタルトランスフォーメーションに 関するグローバル調査

DX推進が決して簡単なものではないことがわかります。しかし同時に、 DX推進の成功要素についても判明しています。この点については次項の「失敗しない DXの推進方法とは?」で触れていきます。

DX効果が現れるまで時間がかかることもある

DXは「データやデジタル技術の活用を初めて終わり」ではありません。その後、持続的な運用により新しいビジネスモデルの創出や企業風土の変革などを、徐々に進めていくものです。したがって DXは効果が現れるまで時間がかかることもあり、早々に見切りをつけてしまう企業は珍しくありません。

「DX推進とは中長期的な取り組みである」ということを、 初期段階に組織全体で認識しておくことが大切です。

企業風土の変化に反発する従業員が出ることも

変革が起きるところ、必ずと言ってよいほど反発が生まれます。とくにDXのような企業風土そのものを変革するような取り組みでは、多くの従業員から反発が生まれる可能性があるのです。

したがって、企業は従業員の声に耳を傾け、 DXに関する説明責任をしっかりと果たしながら慎重にことを進める必要があります。

失敗しないDXの推進方法とは?

失敗しないDXの推進方法とは?

では、失敗しないDXを推進するための4つのポイントをご紹介します。DXに成功している企業は、最低限これらのポイントを押さえているので、不動産業界でも4つのポイントを意識した DXを進めていきましょう。

経営トップが率先してDXの理解を深める

DXは部門で推進するものではなく、組織全体で推進するものです。経営トップが率先してDXの理解を深めることは DX成功の必須条件と考えてください。

DXに取り組む企業の中には、経営トップの理解が足りずに道半ばでプロジェクトを断念するケースがあります。経営トップ自身がDXの理解を深め、「中長期的な取り組みなのだ」ということを認識しなければいけません。

自社が持つ弱点や課題を明確にする

DXとは、企業におけるあらゆる物事の変革です。それに応じて企業の弱点が強化され、課題が解決されなければ DX成功とは言えないでしょう。したがって DX推進ではまず、自社が持つ弱点や課題を明確にしてください。

その際は従業員から意見を集めるだけでなく、5フォース分析やSWOT分析など具体的な分析フレームワークを活用し、改めて自社について分析しましょう。

DX推進の目的とKPIをしっかりと定める

しっかりとした目的を持たないままDXに取り組むのはよくある失敗ケースです。なぜDXが必要なのか?何のために取り組むのか?これらを明確にした上で、 DX推進をビジネスの成功に結びつけるための目的を明確にしましょう。

それに伴い、 DXの成否を判断するためのKPI(重要業績評価指標)も設定してください。KPIが無ければ DXが成功したのか、あるいは失敗したのかを正確に判断できません。失敗した場合の振り返りも行えないので、目的とKPIは DX推進で欠かせない存在です。

DX推進に必要な人員を十分に集める

DXでは、データやデジタル技術を活用してできることの整理、それを経営計画へ落とし込むスキル、さらにはシステム設計や要件定義など、さまざまな知識・スキル・知識が求められます。

つまりDXには多種多様な人員が必要であり、これを十分に集められるかどうかがDX成功の鍵を握ります。低コストを意識し過ぎるがあまり、少人数での DX推進を目指して失敗するケースは多いので十分注意してください。

不動産業界の業務オンライン化によって業務効率化と顧客の利便性を向上するソリューション

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まとめ

経済産業省が2018年9月に示した「2025年の崖※」は、不動産業界でも警戒すべき大きなリスクです。

※データやデジタル技術の活用遅れにより、IT問題が肥大化し日本経済全体が多大な損失を被るかもしれないと考えられているポイント(経済産業省DXレポートより

DX推進は日本企業が抱えている諸問題を解決する方法であると同時に、これからのビジネスに欠かせない武器でもあります。本記事が少しでも、不動産業界における DX推進の火種となれば幸いです。