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不動産業界のDX事例紹介!DXの進め方やシステム選びも解説

掲載日:2022年4月8日更新日:2024年2月21日

不動産業界でDXの「知識・情報・ノウハウ」に課題を感じている企業は多いようです。そこで本記事では、不動産業界のDX事例を紹介します。事例だけでなくDXに必要な知識を総合的にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

不動産業界のDXは進んでる?進んでない?

不動産業界のDXは進んでる?進んでない?

日本でDXの重要性が叫ばれるようになったのは、経済産業省が「DXレポート」を発表した2018年9月頃からです。DXレポートには、データやデジタル技術の活用不足により、日本全体で大きな損失が生まれるターニングポイント「2025年の崖」について説明されています。それから数年、不動産業界のDXは進んでいるのか?あるいは進んでいないのか?データから読み取っていきましょう。

DXに取り組む不動産事業者は2021年に昨年比1.5倍増加

まずは、不動産テック企業(※)7社と不動産テック協会が共同で実施した、「不動産業界におけるD X推進状況」の調査結果をご紹介します。※不動産事業者向けのテクノロジーを開発・提供する企業

資料によると、アンケート調査の対象となった237社のうち「DX推進をしている」と回答した不動産事業者は218社と90%を超え、前年に実施された調査結果と比較して1.5倍に増加しています。
出典:不動産事業者のDXは昨対1.5倍の90%超、DX予算規模も明らかに

不動産業界のDX推進は「着実に進んでいる」と言えるでしょう。また、同資料では「DX推進をしている」と回答した不動産事業者に対し、DX推進の目的も問いかけています。それによれば最も多い目的は「業務効率化」、次いで「集客力アップ」という結果でした。

DX推進の課題は「知識・情報・ノウハウ」

次に、不動産テック企業6社と不動産テック協会が独自に実施した「不動産意識調査アンケート」から、不動産事業者がDX推進で感じている課題についてご紹介します。

出典:PRTIMES 不動産業界全体のDX化進捗は約50%以下、約90%の不動産企業がITツール導入後、DXに効果あり

ご覧のように、DX推進に対して最も多くの不動産事業者が感じている課題は「知識・情報・ノウハウを持っていない」ことでした。ここ数年DX推進が叫ばれていますが、推進のための方法論を所有している企業は少ないことは確かです。

DX黎明期ということもあり全ての企業が手探り状態なのは仕方のないことですが、やはりDX推進の知識・情報・ノウハウを持った人材の確保や、DXパートナー企業との提携を検討するのがDX成功の近道と言えるでしょう。

不動産業界がDXに取り組むメリットとは?

不動産業界がDXに取り組むメリットとは?

不動産業界がDX推進に取り組むメリットとはそもそも何なのか?について解説します。一般的に言われているのが以下4つのメリットです。これを把握しているか否かによりDX推進の取り組み方に差が出るので、改めて確認しておきましょう。

生産性が高まりコア業務に集中できる

「不動産業界におけるD X推進状況」にもあったように、多くの不動産事業者がDX推進に対して「業務効率化」を期待しています。つまり組織全体の生産性アップを意味し、それにより余ったリソースをさまざまな業務や事業に充てられるようになるのです。

最も効果的なのは、不動産業界のコア業務である「お客様とのコミュニケーション」に集中することです。継続的に利益をアップするには「お客様に何度も選ばれる」ことが大切であり、SNSが普及している現代社会ではクチコミが極めて重要な宣伝材料になるからです。

もちろん、データやデジタル技術を用いて新しいビジネスモデルを確立した上で、今までにないサービスを提供するということも重要です。

人手不足解消と労働環境の改善

慢性的な人手不足に悩まされている不動産業界では、DX推進により人手不足問題が解消され、労働環境が改善されることに期待が集まっています。具体的にはRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)などを活用し、定型業務などの自動化を行います。

先進技術を活用した業務自動化は多方面で進んでおり、不動産業界でも今後はRPAやAIなどの活用が進んでいくことでしょう。

ライフワークバランス改善によるモチベーションアップ

DX推進に成功すると、従業員は余裕を持って業務に取り組めます。それはライフワークバランスの改善につながり、心身ともに充実して過ごすことで「仕事のモチベーションアップ」としてビジネスに還元されます。

新しい付加価値やビジネスモデルを生み出せる

現代ビジネスでは業務効率をアップさせるよりも、新しい付加価値やビジネスモデルを生み出すことが重要と考えられています。業務効率化にはどうしても限界があるため、新しい付加価値やビジネスモデルにより、ビジネスそのものの価値を引き上げる取り組みが必要です。

これを可能にするのがDX推進であり、データやデジタル技術の活用により、多くの企業が新しい付加価値とビジネスモデルの創出に成功しています。

不動産業界のDX事例

不動産業界のDX推進について、具体的にイメージしていただけるよう3つのDX事例をご紹介します。いずれも参考になるDX事例なので、自社のDX推進をイメージしながら読み進めてください。

きらめき不動産:セキュリティ万全のクラウドファンディングシステム

きらめき不動産株式会社(以下、きらめき不動産)が神奈川県横浜市に本社を持ち、投資用コンサルティング業務や不動産売買仲介、不動産管理などを展開している企業です。

きらめき不動産のDX推進は「不動産小口化商品(※)」を実現するため、スパイラル株式会社のSPIRAL®を用いて不動産クラウドファンディングシステムを構築しました。※不動産に対して複数人で投資し、得られた利益を割合に応じて分配する仕組み

以前からメルマガ配信や会員管理、問い合わせフォームなどにSPIRAL®を活用していた経緯もあり、「不動産クラウドファンディングシステムもSPIRAL®で構築できるのでは?」と考え導入に至っています。

不動産クラウドファンディングシステムの構築により、自社内で新しいビジネスモデルの確立に成功しています。

きらめき不動産HP
ONIGIRI Funding

エム・エス・ビルサポート:物件管理ASPと連携した会員制サイト

株式会社エム・エス・ビルサポート(以下、エム・エス・ビルサポート)は東京都中央区に本社を持つ、三井不動産と三幸エステートの共同出資によって誕生した企業です。不動産仲介企業の会員組織化などを展開しています。

エム・エス・ビルサポートが取り組んだのは「ホームページのリニューアル」です。ホームページリニューアルってDXなの?と疑問を持つことでしょう。ポイントは「何のためのリニューアルか」です。

スパイラル株式会社のSPIRAL®を活用してホームページをリニューアルし、テナント募集物件の情報メール配信機能を構築したことで社内サーバーに負荷をかけず、会員企業への情報発信が可能になりました。これにより従業員の業務効率とセキュリティが改善され、営業活動の効率化にもつながっています。

エム・エス・ビルサポートHP

ライナフ:「スマート内覧」で物件内覧を自動化

株式会社ライナフ(以下、ライナフ)は東京都文京区に本社を置く新興の不動産テックであり、置き配システムや顔認証施錠など、先進的なデジタル技術を活用した不動産サービスの開発に積極的です。

ライナフはWEB上で物件検索・内覧予約・内覧を実施できる「スマート内覧」を開発し、現在では大手不動産事業者をはじめ多くの企業に導入されています。また株式会社ザ・レジェンドが提供する「igloohome」との連携により、物件予約から鍵の受け渡しまでの自動化に成功しています。

デジタル技術を活用して新しい不動産サービスを創出した、DXと呼べる事例の1つです。

ライナフHP
ザ・レジェンドHP

不動産業界がDXを進めるには

不動産業界がDXを進めるには

ここでは、不動産業界がDXを進めるためのポイントをまとめました。自社にDX推進を始めるにあたり、欠かせないポイントを押さえておきましょう。

「不動産テック」に精通する

不動産業界のDX推進と切り離せない関係にあるのが不動産テックです。不動産業界を取り巻くテクノロジーは日々進歩しており、前述したスマート内覧などもその1つです。驚くことに、2018年には米国のスタートアップ企業が3Dプリンターを使い、住宅のプロトタイプを製作しました。
出典:スマーブ 3Dプリンターハウスが本格化、日本でも動き始める

3Dプリンターを使った家づくりは日本でも導入が進み、お手頃価格の住宅販売が今後は主流になる可能性もあります。こうした不動産テックに精通することは、DX推進の大きな力になるでしょう。

組織的なDX推進体制を作る

不動産業界に限らず、DX推進では「組織的な体制」が欠かせません。日本企業と米国企業のDX取組状況を比較すると、米国企業の方が圧倒的にDX推進に対して積極的であることがわかります。

出典:IPA DX白書2021

同じくIPAのDX白書2021では、組織的なDX推進という項目で「経営者・IT部門・業務部門の協調」について日米で比較しています。

こちらのグラフでは、日米のDX推進体制の違いがより顕著に表れていますね。DX先進国である米国の企業では、経営者・IT部門・業務部門の協調性を重視しており、組織的なDX推進体制を重視していることがわかります。

DXの目的を明確にする

DXは一種のトレンドのようにも扱われています。ビジネストレンドでよく起こりがちな失敗が、「流行だから取り組んだ」など目的を持たずに取り組みをスタートさせることです。これは失敗の可能性が非常に高く、DX推進でも例外ではありません。

DX推進をスタートする以前に、組織全体で明確な目的意識を持ち、DX推進がどのようにしてビジネス成長につながるのか具体的なビジョンを持つ必要があります。

DXに必要な人員を確保する

前掲の「不動産意識調査アンケート」では、DX推進に対する課題において「人的リソースのない」を挙げた企業が2番目に多い結果でした。

DX推進に必要な人員を確保することは極めて重要であり、知識・技術・ノウハウが不足した状態でのDX推進は失敗するリスクが高いのです。人員不足をカバーするにはDXパートナー企業との提携などが選択肢としてあります。

DXに欠かせないシステムを導入する

データやデジタル技術を活用し、新しい付加価値やビジネスモデルの創出、企業風土や製品・サービスの改革を達成するにはシステムの力が欠かせません。DX推進において、具体的にどういったシステムが有効かは後述しています。

DX推進システムの選び方

では、DX推進を実現するシステムはどのようにして選べばよいのか?まずはシステム選定の主要ポイントを押さえていきましょう。

中長期ビジョンの明確化

DX推進は中長期的に取り組むものであり、中長期ビジョンを明確にすることがまず大切です。それは単にシステム選定に必要なだけでなく、DX推進の方向性を固める上でも重要となります。

「中長期的にどのようなDX推進を目指すか?」を明確にすることが、自社にどのようなシステムが必要かを明確にさせてくれます。

ビジネスの変革をもたらすか

導入検討をしているそのシステムは、自社ビジネスに変革をもたらすものでしょうか?DX推進とはデータやデジタル技術を使った変革であり、新しい付加価値やビジネスモデルの創出、企業風土や製品・サービスの改革などを達成するものです。

中長期ビジョンと照らし合わせながら、システムが自社ビジネスに変革を時もたらすものかどうかを精査しましょう。

柔軟性・拡張性に優れているか

ビジネス環境の変化に応じてDXのあり方も変わっていかなければなりません。昨今の顧客ニーズ複雑化を鑑みても、ビジネスの柔軟性・拡張性は大切です。つまり、DX推進のために導入するシステムそのものにも高い柔軟性・拡張性が求められるということです。

使いやすさに優れているか

DX推進と聞くと高度なシステムをイメージしがちですが、「システムの使いやすさ」を重視することも大切です。

DX推進は経営者・IT部門・業務部門が協調し組織的に行うものなので、人員によってITリテラシーはバラバラです。したがって、システムの使いやすさを重視し、組織全体で扱えるかどうかも検討ポイントに盛り込みましょう。

「導入して終わり」にならないか

DX推進の失敗でありがちなのが「システムを導入して終わり」になってしまうことです。システムはあくまでもDX推進をサポートするものであり、システム導入自体が目的になってはいけません。

検討中のシステムには明確な運用プランがあり、DX推進やビジネスに貢献するものなのか?改めて検討する必要があります。

不動産業界のDXに有効なシステム

それでは、不動産業界のDXに有効な8つのシステムをご紹介します。DX推進の目的、達成したい目標に応じてシステムを組み合わせ、自社独自のDXを実現しましょう。

ローコード開発プラットフォーム

ローコード開発プラットフォームとは、専門知識不要とシンプルな操作性で業務アプリやWEBアプリを作成できるシステムです。プログラミング経験がなくても自社独自のアプリを開発でき、データの収集・分析・活用を実現します。

社内データを一元管理する、業務アプリを統合するなどはDX推進の常套手段ですが、それを実現する知識・技術・ノウハウを持ち合わせていない不動産自業者も存在します。そうした企業ではローコード開発プラットフォームによる業務部門でのアプリ開発が有効です。

コミュニケーションプラットフォーム

DX推進に成功する条件の1つが「円滑かつスピーディな情報のやり取り」です。社内外を問わず、情報のやり取りを迅速化することで業務効率と生産性がアップし、より多くのリソースを生み出せます。

これを実現するのがコミュニケーションプラットフォームです。社内外の情報共有に必要なシステムを統合的に提供し、かつてなく円滑でスピーディな情報のやり取りを実現します。

セキュリティマネージドサービス

データやデジタル技術を活用するDX推進において、今まで以上のセキュリティ強化は不可欠です。たった1度のセキュリティインシデントが企業の信頼性を失墜させ、顧客離れを起こします。

しかしセキュリティ強化には大きなコスト・労力がかかるため、有効なのがセキュリティマネージドサービスです。自社のセキュリティ運用をセキュリティパートナー企業に一任し、組織内の生産性を維持しながらセキュリティを強化できます。

RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)

RPAは定型業務を自動化するためのシステムです。昨今ではさまざまなタイプのRPAが登場し、多方面で実績を残しています。大手企業の中には年間数万時間の作業時間を短縮した事例もあり、中小企業でも活用が進んでいます。

RPAにより業務効率と生産性を大幅にアップさせ、新しい付加価値やビジネスモデルを創出する取り組みに集中することができます。

MA(マーケティングオートメーション)

MAはマーケティング業務を自動化するシステムです。昨今ではインターネットを活用したデジタルマーケティングが主流ですが、見込み客ごとにカスタマイズされたマーケティング施策が求められています。

MAを活用すると見込み客の管理やマーケティングの自動化、優良見込み客の抽出などさまざまなマーケティング業務を効率化でき、生産性向上に貢献してくれます。

BI(ビジネスインテリジェンス)

BIはさまざまなシステムから生成されるデータを自動で収集・解析し、レポートを出力するシステムです。データ活用が欠かせないDX推進においてBIは重要な存在であり、データ活用の要でもあります。

膨大なデータを手作業で収集・解析するのは不可能であり、これをBIに任せることでデータ活用に集中し、新しいビジネスモデルの創出などに貢献します。

オンラインミーティング、チャット

オンラインミーティング、いわゆる「Web会議システム」やチャットシステムは今や欠かせないコミュニケーションツールです。DX推進においても円滑でスピーディな情報のやり取りに貢献してくれます。

チャットボット

チャットボットとは、コミュニケーションツールやWEBサイト上で機能する自動応答ロボットのことです。チャットボットにより顧客問い合わせやサービス提供を自動化でき、カスタマーサポートの手間を大幅に軽減できます。

不動産テック協会、DX不動産推進委員会の取り組みにも注目しよう

不動産テック協会、DX不動産推進委員会の取り組みにも注目しよう

最後に、DX推進を成功させるために欠かせない情報収集についてご紹介します。

不動産業界では「不動産テック協会」と「DX不動産推進委員会」が、データやデジタル活用に関する啓蒙活動、政策提言などに取り組んでいます。これらの団体が発信する情報は不動産業界のDX推進に欠かせないものばかりであり、最新情報を敏感にキャッチすることで自社にマッチしたDX推進について考える機会にもなります。

不動産テック協会では「不動産テックカオスマップ」など、不動産事業者のDX推進に役立つ情報が多くあります。

出典:不動産テック協会 不動産カオスマップ

DX不動産推進委員会は2020年12月17日に設立され、「不動産取引の全面電子化」を掲げて活動を進めています。会員企業も50社を超えており、今後の活動が期待される団体です。
出典:CNET Jpan 賃貸業界のビジネスモデルは変化の時–イタンジ野口代表が読み解く不動産DXの現在と未来

DX推進を検討している不動産事業者は、上記2団体の動向に注目し、不動産業界のDX推進に関する最新情報をキャッチしていきましょう。

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まとめ

不動産業界のDX推進はまだまだ始まったばかりです。他業界と比べると古い商習慣などが残っている部分も多く、今後はデータやデジタル技術の活用が飛躍的に進歩する可能性があります。DX推進の波に乗り遅れないよう、本記事でご紹介した情報を参考に、自社のDX推進についてイメージしていただければ幸いです。