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ARTICLEカスタマーサポート〜ゴミ分別まで!?チャットボットでの多様な業務効率化
コールセンターやお問い合わせフォームなど、ビジネスにおけるCS(カスタマーサポート)コストは膨大です。FAQの設置など軽減に向けた対策はこれまでもありましたが、抜本的なコスト削減とはなりませんでした。
そんなCSコストを抜本的に軽減する可能性があるのがチャットボットの存在です。今回はチャットボットの活用事例をご紹介。業界問わず先行事例が登場してきており、カスタマーサポート以外を含めた多様な領域で成果につながりはじめています。
目次
慣れ親しんだ会話インターフェイスで、簡単にコミュニケーションを
チャットボットは、現代人が慣れ親しんでいるチャット形式のUI(ユーザーインターフェイス)で、会話をしながら疑問や課題を解決していくもの。自社のサイトなどに埋め込む形式から、各種メッセンジャーアプリを用いるものまで様々な媒体で活躍しています。
特に最近はメッセンジャーアプリを提供する事業者がAPI(ソフトウェア同士がやりとりするためのインターフェイス仕様)を解放しているため、LINEや、Facebook Messengerといった普段使っているメッセンジャーアプリ上で動かすものが人気を集めています。
というのも、普段から使うサービス上であれば心的ハードルも下がりますし、接触機会も増えるだろうという狙いがあるようです。
システムとしては現在、チャットで会話する内容を手動で入力し、想定質問ごとにストーリーを組んでいくタイプのものと、AIを裏側に設置し、想定される内容から実際にやりとりされた内容までを学習させ、より精度を向上していくものの2パターンが存在。
チャットの内容に応じAIを用いた方がよいものと、そうでないものが存在することから、用途に応じて使い分けられているのが現状です。 それでは具体例を見ていきましょう。
導入事例1:カスタマーサポートコストを6.5人月分削減した『マナミさん(LOHACO)』
1つ目は、アスクル株式会社が展開する、個人向け通販サービス・LOHACO上で、カスタマーサポートを行うチャットボット『マナミさん』です。
マナミさんは2014年9月より同社のウェブサイト上に導入された、AIベースのチャットボット。人間の場合には難しい、24時間365日の対応ができることからカスタマーサポートに重宝され、2016年3月時点では6.5人月分の省力化につながっているそう。
2017年5月からはLINEアカウント上で運用される「LINEカスタマーコネクト」上でも正式に稼働が開始。基本的な質問はマナミさんが回答し、マナミさんで回答ができない質問に関しては裏側で控えるコミュニケーターへ会話を引き継ぐような体制が構築されています。 一度使ったことがある方ならご存じだと思いますが、その精度はかなりのもの。
LOHACOに関する相談はもちろんのこと、ちょっとした雑談にもしっかりと付き合ってくれる人気者です。 2017年4月からは「IBM Watson」を会話エンジンに用いるようになり、今後さらなる進化が期待されています。
導入事例2:LINEのチャットボットで再配達をより効率化する『ヤマト運輸』
2つ目はヤマト運輸株式会社がLINE上で展開しているチャットボットです。
ヤマトは元々LINE上の公式アカウントに160万人以上の友達を抱える巨大アカウントでした。そのアカウントを用いて、荷物の再配達依頼などをできるようにしたのが今回のチャットボットです。
これまで再配達依頼は専用サイト上で操作し、メールで受付完了の通知や不在通知などが送られていました。これらをすべてLINEに集約。LINEアカウント上から再配達依頼などを通知してくれるようになりました。
無論このアカウントでは再配達だけでなく、発送にまつわる料金やサイズ、重量などの確認、集荷の依頼をかけることも可能。 荷物量の爆発的な増加という課題を抱えるヤマトにとって、再配達は死活問題になるほどの課題です。
適切な再配達設定や配送時間の変更が随時行えるためのソリューションは多いにこしたことはありません。 いかにユーザーの心理的ハードルを下げるかという視点で見ると、LINEでのチャットはかなり最適な手段となりそうです。
導入事例3:ゴミの分別をサポートする『イーオのごみ分別案内(横浜市・Repl AI)』
3つ目は、横浜市資源循環局が導入している『イーオ』です。
『イーオのごみ分別案内』と名付けられたチャットボットは、横浜市のすべての住人が知っておくべき、ゴミの分別方法についてサポートしてくれるもの。
横浜市は若い世代が多く、住民票を横浜市に置いていない学生も少なくないためゴミの案内がなかなか全員に届かないそう。そこで若い世代もなじみのあるチャットUIを用いたチャットボットでゴミの分別について簡単に調べられるものを用意。
情報量が膨大で検索も難しいデータベースへ簡単にアクセスできるようにしたのです。 イーオのごみ分別案内はNTTドコモのチャットボット作成プラットフォームサービス「Repl-AI」を用いて作られています。
Repl-AIは、基本は手動で回答を入力するもの。横浜市の場合元々回答に必要なデータはサイト上にあったため、会話に最適化された文言へ言い換え、システムとしてくみ上げていったそう。
「旦那」「黒歴史」といったシュールな会話にも答えてくれることで、ネットを中心に話題を呼んで注目を集めたことで記憶されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
「旦那を捨てたいんですけど…」 横浜市のごみ分別ボットの答えが的確すぎる
今年の3月から共同実証実験として始まったサービスですが、ゴミのような膨大なデータベースの検索性を高めるニーズは少なくないので、今後の広がりがさらに期待されるサービスです。
業務効率化に欠かせないソリューションへ
CSというわかりやすい人件費の削減から、再配達の効率化や、ゴミの正しい分別といった間接的ではあるものの事業に対して価値を提供するものまで。
チャットボットが担える役割はとても幅広いものです。 AIの技術がさらに進歩していけば、チャットボットができることはさらに広がっていくことが期待できるでしょう。
チャットという慣れ親しんだUIを用いて、既存の単純作業を代替していくチャットボット。 これからの業務効率化においては見逃せないソリューションとなっていきそうです。