金融の記事
ARTICLE自力で調べてみた!証券業界の非対面チャネル強化状況(2022年度版)【やまざき調べvol.41】
こんにちは!金融カスタマーサクセス部やまざきです。
2023年最初のやまざき調べです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
2022年は成人年齢が18歳に引き下げられ、高校での金融教育が義務化された年でした。高校生でもクレジットカードを作ったり、ローンを組めるようになりました。2025年には高校生活の3年間、金融教育を受けた世代が成人年齢を迎えます。
今の高校生といえばいわゆる「Z世代」ですが、Z世代といえばテレビよりもスマホやタブレットに対する親しみが深く、社会的な知名度よりも自分の価値観と一致しているかどうかを重視する傾向にあると一般的に言われています。
そんなデジタルネイティブな彼ら・彼女らが金融に関する正しい知識を身に着けて成人となった際、どのような金融商品に興味を持つのでしょうか。
証券業界には、店舗を持たない会社から対面を最重要としている会社まで、様々なお客様との関わり方が存在します。ターゲット層も異なるためどの会社でもデジタル活用の優先度が高いわけではありません。しかし、今後Z世代が現役世代になるまでに、彼らに受け入れられる土壌を作っておくことは、長期的に見たら大切なことではないでしょうか。
1年間金融教育を受けた世代が成人年齢を迎える年になりましたので、今回は業界別の非対面チャネル強化状況調査、証券業界バージョンをお届けします!
調査する業界も3つ目になると、他業界との違いも見えてきました。ぜひご覧ください。
調査の前に・・・Z世代はどんな世代?
冒頭で記載した「Z世代」について、「スマホをよく使う世代」であることは想像がつきますが、どのような価値観や生活スタイルを持っている世代なのでしょうか。
調査結果をご紹介する前に、簡単におさらいしてみました。
今10代~20代前半であること
1990年代後半~2010年代前半頃に生まれた世代のことを指してZ世代と呼ばれます。10代~20代前半くらいまでの年齢層です。
デジタルネイティブであること
ガラケーを使ったことがなく、スマホひとつでコミュニケーションから買い物、就活まで何でもこなす世代です。小さい頃から膨大な量の情報に触れ、SNS上で著名人の炎上事例などを目の当たりにして育ちました。そのため、情報の信憑性やプライバシーの保護に対する感度が高く、情報の取捨選択スキルにも長けています。
多様性への理解度が高いこと
SNSなどを通じて様々な考え方に触れて育ってきたため、自分と異なる価値観の人が存在することを当たり前のこととして捉えます。障害やセクシャリティの違いは当然であり、そういった違いを認める社会を望んでいる人が多いです。
社会問題への関心が高いこと
10代の環境活動家であるグレタ・トゥーンベリさんが有名ですが、異常気象や災害、震災を目の当たりにして育ち、授業でも環境問題や社会問題、SDGsについて学んでいるため、社会問題への関心が高い世代です。
共感できるサービスを共有する堅実家であること
不安定な社会経済が続き、経済的にプレッシャーを受けて育っている人が多いため、堅実で消費を抑える傾向が強い世代です。知名度の高さや親からの勧めがサービス利用に繋がる可能性も低い一方で、時間対効果を重視する傾向があるほか、サービスの背景にあるコンセプトやストーリーに共感し、心を動かせるものにはお金を惜しみません。所有に対するこだわりがなく、他人とものを共有することにも抵抗がありません。
これまでのマーケティング手法では歯が立たない世代であること
このように、Z世代は、生活スタイルや価値観が他の世代とは異なります。そのため、これまでにうまく行っていたマーケティング手法ではアプローチができず、世代に対する理解が不可欠であると言われています。
そんな彼らのことを思い描きながら、調査を進めてみました。
調査対象
今回調査対象にしたのは、「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」(金融庁)の「金融商品取引業者等」内、金融商品取引業者(令和4年10月31日現在)より、「業務の種別」が「第一種」の307社のうち、HPトップページから口座開設への誘導を確認できた137社です。
証券業界も対面を重視される会社が多く、Web上には最低限の情報のみ公開している場合がありましたが、いったんそうしたケースは除外しています。
調査を行った業務は、下記の2種類です。
- 新規契約獲得手段として「口座開設」
- 新規顧客や既存顧客との窓口の一つである「問合せ方法」
証券会社の口座開設方法といえば「Web+転送不要郵便」
銀行業界の非対面チャネル強化状況調査の際にも調査をした、「口座開設」まわりの手続き方法を証券会社でも調べてみました。
証券会社は対面重視?
証券会社137社のうち、PCやスマホで口座開設の申込みができる会社は75社、全体の55%でした。銀行の調査をしたときは90%を超えていたので、証券会社でも進んでいるのかと思っていましたが、半数ほどにとどまりました。銀行は給与口座をまとめてたくさん作る、といったケースがあります。一方で、証券会社は一気に大量の手続きが発生することがありません。その分一人ひとりとの対面営業を重視したサービスを安定して提供できているということでしょうか。
非対面の口座開設方法が存在する75社について、どのような手続きがあるかも集計してみたところ、Webフォームからの申込みを受付けている証券会社が97%とほとんど。銀行業界の非対面チャネル強化状況調査ではWebフォームと近い割合で導入が進んでいた口座開設専用アプリを利用している証券会社は1割にも満たない他、取引ができるスマホアプリを提供しているところが少ないためか、取引アプリで口座開設できるケースは3%弱と少数でした。
個人的には、Webフォームはスマホアプリに比べると導入や維持にかかるコストも少ないので、Webの導入が広まっているのは理にかなっているように感じます。
eKYCの導入は3社に1社
非対面で口座開設を受け付ける際にポイントとなる、本人確認方法についても集計しました。
eKYCを使った方法には、自撮りをするタイプと、銀行口座の情報を照会するタイプの2種類があったので、eKYC(銀行連携)、eKYC(自撮り)で分けて集計を行っています。
こちらも銀行業界の非対面チャネル強化状況調査で調査した内容なので、割合で比較してみます。
どの方法も証券会社のほうが導入割合が低いですが、eKYCを用いている割合は30%と、銀行に比べるとかなり少ないです。eKYCよりは導入コストが低く、郵便局に出向く必要がある本人限定受取郵便よりはお客様の利便性が高い転送不要郵便が43.8%と、証券会社ではメジャーな手続き方法のようでした。
問合せ
これまで銀行や保険業界の調査では、手続き関連の調査として住所変更方法を調べていました。しかし、証券業界ではWeb上のマイページ上で既存顧客向けの手続きができるケースが多いようでした。マイページ上のフローを調べるのは難しいため、オープンな問い合わせ受付方法について調べてみました。
なお、「メールオーダー」や「メール問い合わせフォーム」といった名称で、Webページ上から問い合わせ情報を入力し、送信できるものについては「フォーム」として集計しています。
電話やフォームの導入率が高いのは想定どおりですが、チャットボットやビデオ通話が想像よりも導入されていない印象です。対面重視の証券会社も少なくないので、「チャットやビデオで会話するくらいなら営業担当が直接お伺いする」といったスタンスが一般的なのでしょうか。
個人的に興味を持ったのは、LINEを使った問い合わせ対応です。LINEはどの世代にも普及しているツールです。慣れ親しんだツールで問い合わせできるハードルの低さや、Webチャットなどでは画面を閉じると消えてしまうメッセージ内容がトーク情報として残る点、問い合わせ対応をきっかけにLINE上で接点を持てれば、LINEユーザー情報と契約情報を紐づけてお客さまに合わせたメッセージ配信にも繋げられる点など、メリットが多いように感じられました。
まとめ:証券会社の非対面チャネル施策はコスト重視?
今回は、証券業界の口座開設方法と問い合わせの受付方法について調べてみました。
口座開設はWebフォームと転送不要郵便の組み合わせが多く、問い合わせの受付は電話とメールが主流でした。維持費がかかりそうなスマホアプリやeKYC、チャットボットの導入があまり進んでいない点から、非対面チャネルはコストがかからない方法で強化する業界であるようです。
コストを重視しつつも冒頭でご紹介したZ世代に受け入れられるようにするには、どのように変わっていく必要があるのでしょうか。
たとえば、Z世代はスマホネイティブで時間対効果を重視する「タイムパフォーマンス重視」の世代なので、契約などの手続きがスマホで完結できる状態を作ることが理想かもしれません。例えば口座開設の本人確認は転送不要郵便を採用する証券会社が多いですが、eKYCを使えば即日で口座を開設できるので、タイムパフォーマンスを高めることができます。口座開設手段としてはWebフォームを使う証券会社が多いですが、弊社スパイラルならWebフォームにeKYCを連携させることができます。後続業務もWeb化できるので、口座開設にかかる作業コストを抑えることも可能です。eKYCを使うメリットやフローなどについては、過去の記事でご紹介していますので、よろしければご覧ください。
元営業でも実装できた!? SPIRAL®×eKYCで認証DXを推進します!!【やまざき調べvol.31】
また、Z世代は信憑性と価値観を重要視する消費傾向があります。自社の価値観を伝えるためには、彼らにとって身近な場所で価値観を伝えることが必要です。TwitterやInstagram、LINEなどで信頼性の高い情報を発信するほうが、紹介キャンペーンや自宅訪問営業よりも興味を持っていただくきっかけになるかもしれません。
一方で、SNSを企業として使うにあたり、懸念されるのはセキュリティです。LINE導入時に懸念されるセキュリティーリスクの回避策については、過去の記事でご紹介しています。また、コンテンツ制作などの運用支援は弊社でも行っているので、ご興味があればお声がけください!
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参考文献
「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省、2022年8月26日掲載)
「情報通信白書 令和4年版」(総務省、2022年12月22日閲覧)
「通信利用動向調査」(総務省、2022年5月27日公表)
「電気通信番号指定状況 (電気通信番号計画(令和元年総務省告示第6号)第1第4項による公表)」(総務省、2022年7月1日)
「総務省が「電気通信番号制度の在り方」を情報通信審議会に諮問 MVNOへの音声用携帯電話番号の直接付与を検討へ」(ITmediaMobile、2021年5月26日公開)
「携帯電話の番号が枯渇するって本当?」(日経XTECH、2012年7月6日)
「デジタル社会における多様なサービスの創出に向けた電気通信番号制度の在り方について」(総務省、2021年5月26日)
「動画&動画広告月次定点調査」(株式会社ジャストシステム、2020年7月5日)
「令和4年12月報(令和4年7月確定値、令和4年12月概算値) 」(総務省、2022年12月20日公表)