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大学がDXを推進するメリットや実際の導入事例を解説

掲載日:2022年5月12日更新日:2024年2月21日

DXは「デジタル技術を浸透させ、人々の生活をより良いものへ変革すること」といわれており、現在日本では企業のみならず教育現場にもDXが浸透し始めています。本記事では、大学がDXを推進するメリットと実際の導入事例について解説していきます。

DXとは

DXとは

DXについてと大学がDXを推進する目的について解説していきます。

DXとは

DXは「デジタルトランスフォーメンション」の略称で、経済産業省が発表したレポートにより、日本で広く認知されるようになりました。はじまりは、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した「人々の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果人々の生活は良い方向に変化する」という定義が基になっています。当初、経済産業省が発表したレポートでは、ビジネスに限定したものとなっていましたが、現在では教育現場にも浸透し始めています

大学がDXを推進する目的

大学がDXを推進する目的は様々ですが、主に以下の2つのことがあげられます。

1つ目は、職員を有効に使えているのかを明らかにすることです。ITシステムを使って、職員のスキルや性格などを分析することで、現在の配置や役割が適切であるか分析することができます。

2つ目は、今後DXが進展すると予想される現代社会に適応させるためです。経済産業省が発表したレポートの中に「2025年の壁」という言葉があるのですが、これはDXを実現することができれば、2030年に実質GDP130兆円超の押上げを実現できるというものです。その一方でDXを実現できない場合は、2025年以降最大で年間12兆円もの経済損失が予想されています。

このことから、今後DXの進展が予想され、大学生はそれに適応できるスキルを身につけなければならないのです。

大学がDXを推進する際の3つのポイント

大学がDXを導入する際の3つのポイント

大学がDXを推進する際は、以下の3つのポイントを押さえておくことが大切です。

将来のビジョンを明確にする

DXを推進する上で、将来のビジョンを明確にすることが重要です。

ただ単に、アナログなものをシステム化すればいいというものではなく、「なにを改善したいのか」という目的意識を明確にすることが大切です。

現状を分析する

将来のビジョンを明確にした後は、現状を細かく分析する必要があります。

この際に、良好な点・改善が必要な点を明らかにし、良好な点は伸ばし、改善が必要な点は改善することで、将来のビジョンへと近づくことができます。

費用対効果

DXの推進には多額の費用が必要になるため、気軽に始めることはできません。

そこで、費用に対してどのような効果を得ることができるのかという、「費用対効果」を想定しておきましょう。

たとえば、「事務作業効率化を目的としたシステムの導入で、人件費を削減できる。」など、何を導入することによって、何が改善できるのかを明確にし、それに見合った費用であるのかを確認しましょう。

大学がDXを推進するメリット

大学がDXを導入するメリット

大学がDXを推進するメリットは以下の通りです。

時間・場所の縛りが無くなる

大学のDXが進むことで、学生は時間と場所の縛りから解放されます

なぜなら、デジタル配信や遠隔授業で授業を行うことによって、学生は好きな時間に好きな場所で授業を受講することができるからです。これによって学生は、自分のライフスタイルに合わせた学習をすることができます。

また、新型コロナウイルスの影響もあり、多くの大学がDXを推進するようになりました。コロナ流行以前は、遠隔授業による教育を実施した経験のある大学は全体の30%ほどでしたが、流行後はほとんどの大学で遠隔授業が行われています。

費用が抑えられる

DXを推進すると、より多くの人が授業を受けられるようになるため、学生1人あたりの費用を抑えることができます。

授業のデジタル配信や遠隔授業を行うことによって、国内外問わず遠隔地の人でも授業を受けられるようになり、家から遠い大学に行くための交通費や家賃など、大学に通うための費用も抑えることができます。

学習内容を可視化できる

授業の受講履歴や自分のレベルをデータ化し、分析することで学習内容を可視化することができます。

学習内容を可視化することで、自分の関心やレベルに合わせた授業を組むことができるため、学習の質が向上します。また、VRなどの映像技術も学習に取り入れることで、コストを掛けずに質の高い実習を受けることが可能になります。

新型コロナウイルスウイルスの影響により、急遽遠隔授業に切り替えたほとんどの大学は、いきなりのDX推進に対応できず、学習の質を落としてしまいました。

しかし、DX推進が遅れていた日本にとっては、良いきっかけになったのではないでしょうか。

進学先の選択肢が増える

デジタル配信や遠隔授業で大学の授業を受けられるようになれば、時間・場所の縛りが無くなり、遠隔地の大学にも進学することができるため、選択肢が増えます。

また、自宅で授業を受けられるようになるため、引っ越し費用や家賃といった金銭面の悩みが無くなり、学力があれば、希望の大学に進学することができるようになります。

日本は約25年間不況となっており、親の収入状況によっては遠隔地への大学進学を経済的な理由であきらめる学生もいます。しかし、DXが推進されれば、経済的な理由で進学をあきらめることは少なくなるでしょう。そのため、学生は国内外問わず行きたい大学に進学できるようになるのです。

大学がDXを推進するデメリット

大学がDXを導入するデメリット

大学がDXを推進するデメリットや課題点は以下の通りです。

システムや人材のコストがかかる

DXの推進には、デジタル化が必須となっており、システムの構築などのコストが掛かります。

また、DXの推進が遅れている日本では、DXを推進するデジタル人材が不足しています。そのため、大学は新たに人材を採用、デジタル人材を育成するコストが必要となります。

しかし、DXの推進は国を挙げて行っている取り組みなので、国の支援制度でコストを賄える可能性もあります。また、DXの推進に価値を感じている企業や投資家にサポートしてもらうのも良いかもしれません。

効果が表れるまで時間がかかる

DXの推進から効果が表れるまで3~5年の期間が必要といわれており、最初は効果が期待できません。しかし、システム導入による事務作業の効率化は早期に効果が期待できます。

大学がDXを推進し効果を出すためには、デジタル人材の確保と遠隔授業の質の向上を早期に行う必要があります。

それによって、組織が変革され、学生の生活は良い方向へと変化していきます。

DX推進の手順

DXを導入する方法

DXを推進する方法は以下の通りです。

1.DXを推進する目的を明確にする

まずはDXを推進する「目的」を明確にしましょう。DXを推進することで何を実現したいのか、何を改善したいのかという目的を明確にすることで、方向性や導入するシステムを決定していきます。

また、DXの推進は長期戦になるため、より早く効果が出るための戦略も立てておきましょう。

2.目的の共有

1で決めた目的を、教員・学生と共有し、大学全体でこれからDXを推進していくとい認識を持ちましょう。

大学のこれからの方向性を共有することで、理解を得られる可能性が高くなります。また、大学がDXを推進することによって、学生にも危機感が持たれ、DX推進のための学習を行う学生も現れてくると思われます。

3.課題に応じたDX推進体制の構築

現状の課題を明確にし、それに応じたDX推進体制を構築しましょう。

課題に応じたDX推進体制の構築は以下のような例が挙げられます。

事務作業の効率化

事務作業の効率化を行うためには、すべてのデータを連携させたシステムを構築する必要があります。

多くの大学では、ブラックボックス化した個別のシステムを複数所有しており、システムの連携ができず、データを有効に活用することができていません。

しかし、すべてのデータを連携できる一貫性を持ったシステムを構築すれば、2重入力など無駄な作業が減り、事務作業を効率化することができます。

DXを推進するデジタル人材の確保

デジタル人材を確保するためには、既存の教員を教育するか新しく採用するかの2パターンがあります。

とはいえ、日本ではDXの推進が遅れているため、デジタル人材は希少で新たに採用することは難しいといえます。そのためDX推進のためには、既存の教員への教育が重要となります。

4.DXの推進

課題解決に向けた、DX推進体制の構築ができたら、DXを推進していきましょう。

推進の途中で、実施した結果を分析し、どれほどの効果が出ているのかを確認しておきましょう。なぜそのような効果が出ているのかを分析することによって、効率的にDXの推進を行うことができます。

DXの進捗を確認するためにも、目標数値などを段階ごとに設定しておくと、効果が確認しやすくなります。

ポストコロナにおける高等教育とは

ポストコロナにおける高等教育とは

ポストコロナにおける高等教育について解説します。

高等教育のDXをどのように推進するか

遠隔授業を実施する大学数は、コロナ流行前は30%前後でしたが、流行後には97%にまで上昇しています。このことから、「デジタルは学びを止めない」という価値をもたらしました。

ほとんどの大学でデジタルを活用した遠隔授業が行われたことから、日本に認知が広がった今、高等教育にもDXを推進し、高度化する絶好の機会といわれています。

しかし、高等教育にDXを推進するためにはコストが必要となります。そこで、企業や投資家のサポートを得ることで、高等教育にDXを推進することが可能となります。

また、コロナ対応のための遠隔授業関係整備への支援を目的とした補正予算が組まれるなど、国を挙げてDXの推進を支援しています。

その中の1つの例として、文部科学省が施策を実行している「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」が挙げられます。

この取り組みは、大学・高専学校においてデジタル技術を積極的に取り入れ、「学修者本位の教育の実現」「学びの質の向上」に資するための取り組みにおける環境を整備し、ポストコロナ時代の高等教育における教育方法の具体化を図り、その成果の普及を図ることを目的としています。

どのように人材を育成するか

日本でDXが推進されている今、データを分析するスキルを身につける必要があります。

今後、さまざまな物事がデータ化し、可視化できるようになります。その際に、データを分析できなければ、自分の生活へ活かすことができません。学習で例えると、自分の将来のビジョンに沿った学習を見出せないということになります。

それを防ぐために必要なのが、教育側の人材育成です。これからの日本の教育では、DXに対応できる人材を育てるために数理・データサイエンス・AI教育を強化する必要があります。

大学のDX事例

大学のDX導入事例

DXを推進している大学の事例を紹介します。

日本経済大学

日本経済大学は、「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」の実施機関として選定されました。

選定されたのは「仲間とともに個性を伸ばす。全額DXプログラム」です。このプログラムでは以下のような取り組みが行われています。

  • 「目標別コミュニティ」を設置し、仲間づくりをすることで個性に合ったキャリア意識の醸成や学習への意欲を高める。
  • 学生の成績情報に加え、興味・関心を把握する「eポートフォリオ(学習記録デジタル化)」を導入。また、学修管理システムとの連携によって、学生のレベルに合わせた授業やカリキュラムの実現。

日本経済大学は、いち早くオンライン授業・入試を取り入れるなど、デジタル化に関心の強い大学です。また、新設された「デジタル・ビジネスデザインコース」では、DXに通じた人材の育成に力を入れており、AI・データサイエンスについて学ぶことができます。

参照:日本経済大学

神戸大学

神戸大学では、以下のような取り組みが行われました。

  • LMSシステムに表情認識機能を搭載し、学生の表情を分析することで集中力を可視化できるようになった。
  • オンライン授業と対面授業を同時並行で行う「ハイブリッド授業」を導入。

LMSシステムとは、情報技術を用いて行う学習システムのことで、学習の内容管理・進捗状況・教員とのコミュニケーションを行うためのツールを搭載したシステムのことです。

このシステムは多くの大学で採用されていますが、神戸大学では表情認識機能を搭載することにより、LMSシステムの高度化を行いました。

また、ハイブリッド授業のために、教室をスマート化しafterコロナに最適な環境整備を行いました。

参照:神戸大学

獨協医科大学

獨協医科大学では、以下のような取り組みが行われました。

  • 学生の学修に関するデータをAI解析させ、学修支援に活用する。
  • 教員がデータの解析結果を共有し、各学生に合った支援を行う仕組みを構築。

獨協医科大学では、オンライン授業での学生の様子をAIが分析しており、参加度・理解度・習熟度を可視化することに成功しました。また、それらのデータを基に学習面や生活面で支援が必要な学生を早期発見できるシステムも設置しました。

キャンパス内は5Gが導入されており、学生一斉にオンライン上にアクセスしても耐えられる環境となっています。

参照:獨協医科大学

立命館大学

立命館大学では、以下のような取り組みが行われました。

  • 事務処理速度を現状の30%改善した。
  • 書類の電子化を行い、在宅勤務でも決済できる環境づくり。

立命館大学では、総務・人事・財務の職員が在宅勤務でも決済を行えるように、稟議書などの書類を電子化し、事務効率の向上を実現しました。

今後は学生情報に関する事務についても、電子化を検討しているそうです。

参照:大学ジャーナルオンライン

学校/教育機関のあらゆるチャネルをITで効率化するソリューション

学校/教育機関のあらゆるチャネルをITで効率化するソリューション

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まとめ

今回は大学がDXを推進するメリットと実際の事例について解説しました。

日本では新型コロナウイルスがひとつのきっかけとなり、企業のみならず教育現場でもDXが推進されるようになりました。すでに推進している大学も多く、様々なことを実現することに成功しています。まだまだ課題の多いDX推進ですが、目的を明確にし、大学・学生に合った方法・システムでDXを推進していくことが大切です。

これから日本を担っていく学生のためにも、大学のDX推進は急務であるといえます。